東北大学 川島隆太教授 インタビュー | topics HOMEへ| 漫画ヘルプマン!作者・くさか里樹さんを訪ねる旅
コムスン騒動と介護のプロ
2007年09月08日 その他
介護業界の皆さんへのメッセージ~
6月6日、厚生労働省は、訪問介護大手コムスンの事業所に対し、新規指定や更新を2011年まで認めない方針を発表しました。
『コムスン騒動』は、コムスン社内の介護保険制度の認識と知識不足から招いた事ですが、介護業界全体に言えることだと思います。そこで、介護業界のカリスマの三好春樹先生からメッセージを頂きました。
24時間365日の介護
介護保険制度が始まる前夜ともいうべき頃の話である。制度の発足を狙って、試験的に24時間対応の介護を始めた会社があった。私の友人がそこに就職したのだ。
しばらくの見習い期間は、先輩ヘルパーについて歩く。軽自動車で訪問先に行き、路地を走って家に入る。寝ている老人のフトンをめくってオムツを開き、サッサとオムツを交換して、再び走って車に帰る。
一部の先輩ヘルパーの中にはオムツを開いて濡れていないと「ラッキー!」といって引き返すのだという。仲間うちでは「介護界の佐川急便」と呼ばれていたという。
一人で訪問するようになった彼女は、ちゃんとした介護をしたいと思って私の「生活リハビリ講座」(現在は「新しい介護セミナー」と名を変えて全国各地で開催中)にも参加している人だ。そんなケアをするためにこの世界にわざわざ入ったわけではない。
ある夜、訪問すると一人暮らしの女性はまだ起きていて落ち着かないようすだった。オムツを開けてみると濡れていない。もちろん彼女は「ラッキー!」とは思わない。肛門を見ると肛門活動筋が開いている。これは排便反射が起こっているサインである。直腸が収縮しようとしているのだから、今こそ排便のチャンスなのだ。
彼女は老人を説得し介助トイレの便座に座ってもらう。座れば腹筋の力も出るし、何より寝ているのと違って重力が味方をしてくれる。
果たして10分後、便器には大量の排便があった。誰もこの老人が便秘だと思っていなかった。2日毎に排便があったからだったが寝たままの姿勢でオムツの中へというのは、物理的にも心理的にも出ないから、直腸は空になることはなく、押し出されていただけなのだ。いわばいつも便秘状態で、じつはこれがこの女性の夜間の不眠や不穏の原因だったのである。
介護は「後始末」ではない
本人は気持ちよくなって涙を流して喜んだという。少し時間がオーバーして事務所に帰ると、上司が「なぜおくれたのか」と聞くので訳を話すとこう言われたのだという。「あなたの仕事はオムツ交換だから、トイレに連れていくことはない」と。
あきれて彼女はそこを辞める。残念ながら、今の介護保険制度では、ケアプランにない介護サービスは『不適切サービス』と見なされてしまう。
コムスンのヘルパーの多くは『利用者本位の介護』にまじめに取り組んでいるが、「後始末」は介護ではない。なくしてはならないのはオムツ交換という「後始末」ではなくて、一人一人の生活をつくるための「排泄ケア」だ。
幸いこの業界は人手不足で特に経験者が求められている。せめて、後ろめたさを感じないような、できたらいい仕事をしていると誇れるような事業所を見付けよう。なければ自分で作ればいい。それがプロだと思う。







